自然栽培の理念
「自然栽培」とは自然の力をいかんなく引きだす永続的かつ体系的な農業方式の呼称です。肥料・農薬には頼らず植物と土の本来持つ力を引き出す農業です。

自然栽培は、一切の肥料・農薬を使用しません。
「自然栽培」の定義は自然界を師として、自然から学び、自然を尊びながら自然に添っていく中で大自然の法則を田畑に応用する農法です。

農家は膨大な年月を費やして、土づくり、タネづくりを行います。
いわば“土からもタネからも逃げない“、そして、肥料や農薬に頼ることなく大自然の潜在能力を田畑に発揮すること、植物の本来の生き方に向き合うこと、これをもって「自然栽培」と呼んでいます。


■自然栽培を実施するうえでの理念・原理原則
「自然栽培」とは自然の力をいかんなく引きだす永続的かつ体系的な農業方式の呼称です。肥料・農薬には頼らず植物と土の本来持つ力を引き出す農業です。


■自然栽培の理念
自然栽培の理念は、「自然尊重 自然規範 自然順応」の3 つの言葉に集約されます。
この3 つの理念を農業に応用したのが自然栽培であり、普段の経済活動等のなかにも
応用可能なこの理念を普及していくことを目的とします。


■自然尊重
自然栽培では、土が本来持っている植物を育む力を重視、尊重します。従って、化学肥料・農薬や畜糞堆肥等の土の力の発揮の妨げになるものは使用しません。またそのことによって植物の持つ生命力を引き出すことを重視します。


■自然規範
自然栽培では、自然を先生とします。自然栽培をする上で人間の指導者は存在しません。なにか問題に出会ったとき、人に聞くことを主とするのではなく、身近な自然を手本として問題解決の糸口を見出すことを主とします。また、これは責任が自らにあることを意味します。その覚悟を持つことで、自然を少しずつ紐解いて行くことができます。


■自然順応
自然栽培では、自然の持っているリズムに順応します。日本では、春の次に夏が来て秋、冬と変化します。春の次に秋がくることはありません。何事も少しづつ、ただし確実に変化していくことを基本にします。


■普及の目的
自然と調和する自然栽培の原理を人間の生活活動にも応用することも目的とします。また、自然栽培の普及により自然環境を保全し永続発展可能な食と農のスタイルを確立します。

さらに人と人、人と自然、人と大地のつながり、生かされている意味、いのちの本質につながる広がりと深さがこの農業にはあります。

関わる人自身に気づきをもたらし、幸福の実現に寄与する本来の食を実現するため自然栽培を普及していきます。


■自然栽培の実施
自然栽培の基本的な考え方は、土・植物の持つ本来の力を発揮させることにあり
ます。従って、自然栽培を実施するうえでしなければいけないことは「土づくり・種作り・人づくり」の3 つになります。


■土づくり
土の本来持つ力を発揮させるためには、土に余計なものを入れないことが基本となります。加えて、過去に入れた余計なものを積極的に抜き出すことに努めます。これは土に施されてきた肥料や農薬が、土の本来の力が発揮されることを阻害しているという経験則に基づいています。

この過去に施されてきて、土に残留する肥料や農薬などの本来の自然=土からみて不純物となるものを「肥毒」と呼んでいます。

さらに植物の根張りを増進させるため、土の団粒化を促進します。「軟らかく、温かく、水持ち・水はけ」がよい状態になるように努めます。その際、腐植を促進するために圃場に投入するものは原則、田畑で生産された植物の残渣を中心とします。外部から土に投入する場合は、その素材が清浄なものであることを必ず確認します。


■耕起について
土の過去を精算するために土層を破壊する目的、ならびに土壌の植物の腐植化、土壌の循環能力を高めるために、耕起は行います。何十年何百年と自然栽培を続ける中で将来的に土が清浄化されて、植物が種を落として次の年、また実を実らす中で十分な食料が生産できるようになるかもしれません。しかし現状は上記の二点の目的をもって食料としての供給力を維持するため耕起は行っています。


■自然のまま、放任ではない
肥毒という土に施した過去の生産が肥料・農薬を使わず営農を実現する重要な要素になるため、人は積極的に田畑に手をおろします。播種をすれば収穫までなるべく人は作物に関わらない方が良いという考え方もあります。それはそれで理想なのですが、営農を実現し肥毒という過去を生産するためには自然の一部である人も積極的に農業を行います。土と作物の一生に向き合うことになります。


■除草について 草の意味 
草は意味あって、必要あって存在してくれています。土を進化させ豊かにする目的で存在しているといえます。しかし田畑は野山とは違い、作物を生産する使命を持った場です。農業経営上も草は申し訳ないが邪魔になってしまいます。そこでやむをえず草には、一度どいておいてもらう必要があります。除草することで草が土の進化のために働けない分、人が土の状況を見ながら作物の根を使って土の腐食化をすすめ、土を豊かにしていきます。


■除草について 農村で生き、普及するために
無除草不耕起の取り組みは理想ですが、農村での普及と農村に溶け込んで生きていくとき、草をはやしていては駄農と嘲笑われることが多々あります。すると地域の中で溶け込んだり、普及していくことはとても難しいことになります。ただでさえ農薬・肥料を使わない栽培でともすれば地域で孤立することになりやすいので、除草は近隣と接するところほど丁寧に行うよう心がけます。
作物を生産する場が、周りの人から罵られたり、嘲笑されるような場とならないように周囲の人の前向きな思いに田畑が囲まれるように適切に除草を行います。しかし除草剤は使用しません。


■種づくり
土と同様、植物のもつ生命力を最大限発揮させるためには、種子に残った肥料や農薬などを取り除くことに努めます。また、自分の畑にあった種子を確保するためにも、種を取ることで作物の生きるプロセスに向き合うためにも自家採種に取り組みます。

ただし、自家採種は固定に時間がかかり、リスクを伴うため、家庭菜園レベルで少量行います。そして種が固定されてから量産を行うようにします。


■人づくり
土づくり、種づくりを実施するのは人間です。作る人自身が常に理念に立ち返り、自分作り、土づくり・種づくりに取り組むようにします。


■自然栽培への転換
自然栽培を開始するとき、原則として、農地の一部を転換し順次その面積を拡大していく方法をとります。自然栽培の原理から考えて、物事は始め小さく始まり、少しずつ広まっていくのが理想的です。拡大は計画的に行い、経営的に継続可能な設計を行うようにします。自らの技術と販売能力に見合った面積からはじめるようにします。


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